Jumping Fish

終章

 光は、透明ではなく。
 闇は、不透明ではなく。

 未来は、光ではなく。
 過去は、闇ではなく。



 春先の風が吹く。
 もはや土台しか残っていない砦を歩く。探すべきものがあった。
 墓標のかわりに己が突き立てた剣。
 だが、それはついに見つからず。
 この場を訪れた誰かが持ち去ったのだろう。
 あるいは、吹雪か何かで遠くに飛ばされてしまったのかもしれない。
 ……それでも、ささやかな希望は心に。

 春先の風が吹く。
 まだ薄い陽光があまねく降り注ぐ。
 不可思議な想いを抱いたまま、ディリータはひとり祈った。
 神ではない。それが何かは分からない。
 祈りは。願いは。
 届けたかった言葉は。


 それは、判然としないあの世界で彼女に告げた言葉だった。

<終>

あとがき

2021年3月のスクエニオンリーのときにあれこれと友人氏からネタをもらったのですが、それを元に本作はできあがりました。とはいっても、原形はほぼ留めていません。本当はもう少し短い話で、もう少し救いようがない(え?)話でした。いや、どうだったろう…。とにかく、「ディリータが過去に飛んだらどうなるよ」というのがテーマ。少年ディリータが未来に飛ぶというのもいいなと思ったのですが、それはそれで真っ暗話なような気もします…うーん。

今までティータをヒロイン?に据えて書いたことがなかったので「彼女は本当にティータなのか疑惑」がついぞ消えることはなく…真面目な子だと思ってはいるのですが、それだけじゃないといいなあなんて思ってもいます。

オリキャラ三人組と絡むのは書いていて楽しかったです。なんかミケーラが勝ち残ったような感じになってしまいましたが、贔屓してたわけじゃなくて偶然です。…エイム(一番エピソードが少ない出番も少ない)ももうちょっと書ければよかったなー。

書いているうちに「これはベイグラントストーリーのラスボス第2形態前の展開とちょっと似ているかも?」と気付いてしまって思わずうめいてしまったのですが、あのエピソードはいいよね涙だよね…と思い出してそのまま書き進めました。とはいうものの、さらに書いているうちにそれを忘れてしまって、結局は自分風味になったような気がします。

2021.11.08