#12 旅の終わりに

 朝露か、昨夜の雨の名残か。光の粒がきらきらと朝の草原に跳ねる。
 風が、己の身をすり抜けて吹く。外套が音を立ててはためく。涼やかなその風に、ディオンは時の移り変わりを感じた。
 旅が、終わる。混沌の世界を、現実を受け止めるための旅が。声を聞く、旅が。
 得られたものは何だったろう。失ったと気付いたものは何だったろう。
 想いを、絶望と希望を、怨嗟と悔恨を、祈りを、願いを、望みを、受け止めて。
 その果てに、己の、世界の「未来」を夢見た。


 空に白い鳥が見えた。ディオンに向かってまっすぐ飛んでくる文使いの鳥は、思念ではなく、文を足に携えていた。文を外し、傍らで同じように佇んでいたテランスにストラスを預けると、ディオンは飛ばし文に目をやった。
 ――みんな、まってるからね。
 少し幼くも美しい筆跡はキエルのものだった。文にはそれだけが書かれていて、ディオンはかすかに笑んだ。テランスにも文を見せると、彼も微笑んだ。
「行きましょう、ディオン。皆が――世界が、君を待っている」
「……ああ」
 確信に満ちたテランスの言葉に、ディオンは一瞬、逡巡した。だが、その迷いもすぐに霧散する。この旅で得た様々な想いを胸に、これからを生きる。そう、決めた。
 独りではない。手を伸べてきたテランスに己の手を乗せ、ディオンは頷いた。


 そうして、今日から続く明日――未来が始まる。

<終>

あとがき

オリジン崩壊後に生還したディオンと、彼に再会できたテランス。たぶんきっとあれだと大怪我どころの騒ぎじゃないとは思うのですが、しっかり療養して(させられて)、旅ができるくらいまで回復した…という前提のお話になりました。その前にもその後にも色々テラディオ書いていますが、この本は書いていて特に思い出深く、感慨深くもあります。端的に言うと書いていて楽しかったです。とはいえ、最初はうまく書けないと悩んで「灰色の都」から書き出したんですけども。

本のほうにはライナーノーツ載せましたが、こちらでも少し。冒頭、サブクエで振り回してくれるオルタンスは過去作「婚礼衣装狂騒曲」でも出てきます。「古びた井戸」でのマーサはディオンの生存を許せなさそう。「石礫」はアバンストラ…げほげほ。「羽ばたく鳥の行く先は」、ゾルターンがブラックソーンより余程話す不思議展開。彫金師Lv100。「掠れた手紙」のハルムシュタットは執意の方とはまた違う人です。テランスのトラウマを少しでも取り除きたかったディオンでした。「市場にて」は少年少女三人組にほろろとなって書きました。エルはあかねこの宅配屋さんかも。「灯火」は現実と向き合うディオンの話。お焚き上げでした。「灰色の都」の岩鼠はFFT砂鼠をネタにしています。骸旅団?いえいえそんなことは。しかしこの話は長く書きすぎた。必要量でしたが…たぶん。「真実の名のもとに」での執行者、本編でももっと触れると思いきや「?」だったのでもったいなかった…。「女神の微笑み」はテランスの回想とダブルプロポーズ。何度でも誓うがいい。「晴れた空に降る雨」はこの話のタイトルとマダムの最後の言葉のためにできた話です。ページ調整が大変でした。「旅の終わりに」はごく短い話?です。ほどよくきれいに終わってよかったなと思っています。

…長いあとがきになりましたが、本文(もあとがきも)最後までお読みいただき、ありがとうございました!

2024.10.27 / 2025.11.22