第32回 家庭の構造

 FFTにおいては様々な形で「家族」が登場します。有名どころでいえば、ベオルブ家。言葉の端々からしてかなり複雑そうな家庭であることが窺えます。最も複雑な家族構成といえばオヴェリアさまですが、しかしこの方については私も追いきれないところがあるのでこれはまたいつか後程書こうかと思っています。ということで、今回はFFTにおける様々な家族事情について。

 それにしてもFFTには「母」が出ません。松野作品の特徴といえばもしかしたらそうなるのかもしれない…と数少ない経験をもとに述懐してみるのですが、明確な母は「ルーヴェリア王妃」だけですね。不思議といえば不思議です。

ベオルブ家

 物語の根幹を為すベオルブ家で登場するのは、天騎士ともうたわれた父バルバネス、長兄ダイスダーグ、次兄ザルバック、末弟ラムザ、そして唯一の女子であるアルマの4兄弟。ダイスダーグとザルバックの2人は同腹のようですが、アルマとラムザが同腹であるという記述は見当たりません。もっとも、アルマが【聖天使】として覚醒することが定められていたとするならば、それを阻止したラムザもまた血が繋がる故と考えてもおかしくはなさそうです。そして、考えてみれば(便宜上、上2人と下2人の母親は同じと仮定します)この2組の母親の生死は実は不明なんですね。なんとなく生きてはいないだろうなと思っていたのですが、もしかするとどこかで生きていたり…しないかな、やっぱり。

 そしてもうひとつ気になるのがラムザとアルマの母方の身分について。第1回でも述べましたがかなり微妙な人だったのではと思う次第。ディリータ達とは確実に出自を異にしそうですが、ザルバックからは「所詮下賎の子」と言われてしまうこの哀しさ…。おそらくダイスダーグとザルバックの母親とバルバネスは正式な「政略結婚」だったと思うのですが、もしかするとラムザとアルマの母君はダイスダーグの母親に仕えていた女官などの身分ではなかったかと最近では思います(ヘンリー8世でいうところのアン・ブーリンでしょうか)。そうなるとこれはかなり微妙な身分なので、生きにくいところがあってもおかしくないかもと思う次第です。

ブナンザ家

 ある種、FFT理想の親子であるムスタディオとベスロディオ。あの親にしてこの子ありというか、ベスロディオさんを見ていると、きっとムスタディオは戦が終わったらゴーグに帰ってきてまた修業を始めるんだろうなあと容易に想像できます。そしてそれがきっとムスタディオにとっては一番なのではないでしょうか。「家族」ということからいうとちょっとずれてしまうふしもありますが、彼が機工師となった時のベスロディオさんの表情というのもちょっと見てみたいです。

ティンジェル家

 とりあえず気になるのは、世に言われる「宗教騎士団」では妻帯が禁じられるところも多かったのですがヴォルマルフさんにはしっかりお子さんが2人…。ルネサンス時代のローマ法王のように「甥」「姪」としているようでもなさそうですから、神殿騎士団においては妻帯は禁じられていなさそうです。
 ゲーム中でヴォルマルフがどの段階から魔界と接触し、「ヴォルマルフ」ではなくなったのかは謎ですが、そこらへんもゲームの中に出てくるとファンタジーとして面白くなったのに!とこれは床ばし。しかしおそらくはライオネルのドラクロワ枢機卿がゼラモニアで聖石を発見したのと前後したあたりから(すなわち、五十年戦争の終結を見越したあたりから)地上の権力を握るために悪魔に身を売ったのではないかなあと思うのですが…うーむ、どこかの誰かを連想すると思ったらベイグラントストーリーのロメオさんでした。理想を追いすぎて「こうなったのか」、欲望が高じて「こうなったのか」……もしかしたら何者かに操られたのではないか?と思うヴォルマルフさんです。

 さて、そんなヴォルマルフ氏の2人の子供ですが、メリアドールにとってイズルードは「弟」以外の何物でもなかったんだなと本当に思います。ラムザがアルマを探して旅をしたように、イズルードを殺された(と思った)メリアドールは半ば私憤でラムザを討ちに来た。それが神殿騎士団の意思とは異なるものだとしても彼女はそうしたでしょうし、それ故にヴォルマルフが「化物」に姿を変えたときの衝撃は誰よりも強かったのではないかなと思います。セリフがないのが悔やまれます。

オルランドゥ家・デュライ家

 さあ、今回のコラムの本題、オルランドゥ家とデュライ家の関係です。諸説入り混じっていますが、オーランの人物紹介を見ると次のように書かれています。

南天騎士団所属の魔道士。“雷神シド”ことオルランドゥ伯の義理の息子。オーランの実の父親はシドの亡き戦友で、五十年戦争の末期に戦場で死亡した。シドの片腕として活躍していたが、ゴルターナ公暗殺事件以後、その真相を知る者としてディリータによってゼルテニア城の地下牢に囚われの身となっていた。

 オーランはシド伯の義理の息子。この言葉によって考えることができるのは、まず「シド伯の娘と婚姻関係があったため、シド伯とは義理の親子であった」ということ。そして、「オーランの父親亡き後、オーランの義理の父になった」ということ。人物紹介に父親の話が出てくるので、おそらくは後者だと私は思っていますが、もしそうだとすると、シド伯とオーランの父君は「戦友」、オーランにとってもそれまでの呼び方が染み付いていたのではないかなと思います。また、五十年戦争末期というと、オーランにとっては10代半ば〜20代前半の時期となるでしょうか。養子縁組をするよりは後見人についた方がちょっと自然なような気がします。

 が、しかし。シド伯の娘さんと婚姻関係があるようにはなかなか見えない…というより、ゲーム中のこの人はさっぱり落ち着いていないため、結婚しているように見えないのです。また、シド伯を実の父のように慕っていることから、婚姻関係はあるとしても、やはりその前に養子縁組があったのではと考える方が自然ではないかなと思います。人物紹介のオーランの父君の死亡時期が「五十年戦争中期」だったら悩むところも少なかったのかもしれませんが、いかがでしょうか

 さて、デュライ家についてはもうひとつ謎があります。それはオーランの結婚相手は誰ということなのですが…いや、むしろオーランからアラズラムさんまでの家系図ぜひ見せてほしい!と切に願うところなのですが、もしアラズラムさんが直系子孫だと仮定した場合、デュライという名前をどのように残していったかは気になるところです。しかしこれについてはきっと長くなるので、「デュライ白書の謎」シリーズでまた触れてみたいと思います。

2003.07.21