第19回  何故オヴェリアはディリータを刺したのか

 大仰なタイトルを持ってきました。「何故オヴェリアはゼルテニアの教会跡でディリータを刺したのか」……いやはや終わった終わっためでたい。パチパチ…そんな気分のプレイヤーを(デュライ白書のテロップと同時に)叩き落とすようなイベントがどうして生じたのでしょうか。今回はこれに迫ってみようと思います。

 さて、一度そのシーンを思い起こしてみると、舞台はゼルテニアの教会跡。ディリータはオヴェリアを探してこの場所へとやってきます。この場所は以前落ち込むオヴェリアをディリータが励ました場所。何か因縁めいたものを感じるのですが、そこへやってきたディリータはオヴェリアを発見。チョコボから降り近寄ります。そのとき……

 というわけなのですが、このシーンについて先日クリアしたばかりの友人に聞いてみると「ラムザと同様に自分も、そしてイヴァリースの民を利用されるのにこれ以上耐えられなかったんじゃないか」という答が返ってきました。なるほど。確かにそれもあるかもしれないな……とそこから延々と(久しぶりに)討議し、その結果出てきたのが「たらればFFTその2」だったりします。でもこれは余談。

 私は友人と考えが違って、もっと個人的なことだったと思うんですよね。端々に書いてるんですがオヴェリアは(ゲーム上で見る限り)お姫様の王道をいっています。つまり、自分に意志がない、もっとも傀儡にしやすい存在。自分で何もしないくせに「利用するのね」はないでしょ、あーた……と言ってしまってはオシマイなんですがそういうことです。でも、多分利用されたと思った相手がディリータだったからこのセリフは出てきた。他の人だったらここまでの行動はおこさなかったでしょう。

 オヴェリアがディリータへ投げかけた言葉、「ラムザと同じように私も利用するのね」は、ディリータにとってみれば図星以外の何者でもないわけで(笑)、でもそれとは別に「そうじゃないんだ!」という部分もあったはず。おそらくオヴェリアだけでなくいろんな人に同じようなことは言われていたとは思います。だけどそれが姫さんだったから刺し返したのかなとも思います。お互いに「相手だったから」起きたことなんでしょうね。

 そうしてこの悲劇は生じたんですが、オヴェリアさんはディリータを殺すつもりで刺したんでしょうか。それとも、殺すつもりはなかったけど傷つけたかったんでしょうか。その後は一体どうするつもりだったんでしょうか。

 よく言われるのは「素人は殺すつもりがなければ銃を向けられない」みたいなこと。どこに当たるか分からないような腕では、殺す心積もりがなければ(それくらい追いつめられなければ)銃を持てない…オヴェリアにもこれが当てはまるはずです。きっと最初からオヴェリアはディリータを殺すつもりであの場所にいたんでしょう…きっと。

 そして、その後ディリータが反撃しなくてもきっとオヴェリアさんは自分で命を絶ったはず。要するに心中したかったのかなと思ってます。それをディリータが知っていて刺し返したんじゃないか?とも考えることも出来るですね。いや、それもいいかもしれない(←おい)。

 と友人と話していたら意外な答が返ってきました。「え?ディリータはオヴェリアさんを刺したの?」……よく画面を見てなかったそうでこの答が返ってきたんですが(殴って気絶させたと思ったらしい)、そういえばどうだったっけ?と私も悩んでしまいました。友人の意見は「バルマウフラを殺さなかったんだから……」ということ。そうか、そういえばそうなんだ!ディリータは自分に近い者には妙に甘い傾向がある……オヴェリアさんももしかして?

 でも、ディリータはオヴェリアさんとは違ってプロです。急所は外さないはず。あの咄嗟の出来事の場合、まず間違いなくディリータが刺したのは急所でしょう。その後このことについて散々悩むとは思いますが。

 しかし、このことについて考えると実に様々な意見が出てくるところは面白いなと思います。ちなみに、友人曰く「ディリータは死んでオヴェリアさんは生きている」そうで、ディリータ、オヴェリアさんのこと刺したんでしょうというと「そんな奴じゃない」という答が返ってきました。ありがとう、友よ。

1999.04.17