第9回 五十年戦争と獅子戦争のモデル

 Vジャンプの攻略本によると、FFTの舞台背景である「五十年戦争」とその1年後に勃発する「獅子戦争」は世界史でもおなじみの「百年戦争」(1339〜1453)と「ばら戦争」(1455〜1485)がモチーフのようです。
 百年戦争の直接の原因は「フランス王位の相続争い」。すなわちフランスのカペー王朝が絶えてしまい、かわってヴァロア王朝のフィリップ六世が即位したとき、イギリス王エドワード三世が血縁関係によりフランス王位の継承を主張したというもの。イギリスはこのときフランス国内に広大な領土を持っていてこれら領土に関してはフランスの臣下という関係にありこうした封建関係の争いが重大な一因とされています。

 さて、フランスは開戦当時から絶対的な兵力でイギリスを上回っていたにもかかわらず、所所の戦いで勝利を収めていたのはイギリス。その要因はフランス国内における有力諸侯の対立が激しく国内の混乱を招いていたこと、黒死病の被害、そして国王がイギリスの方が有能であったこと、軍事的にイギリス側が進歩を遂げていたこと、などがあげられます。
 その結果、イギリスはアジャクールの戦いで大勝し「トロワの和」(1420)によりフランス王位継承権を得、この後のフランスは西北部のイギリス征服地、東北部のブルゴーニュ公支配地、南部の王家支配地の三分されてしまいました。こうした窮状を救ったのが「聖女」ジャンヌ・ダルクなのです。
 ドンレミ村の農民の一少女であったジャンヌ・ダルクの奇襲ともいえる戦法でフランスはなんとかイギリスの包囲網を突破。その後イギリス軍を駆逐し国土の統一を進めることが出来たのです……が。

 フランス側の勝利の女神ともいえるジャンヌ・ダルクの末路はその功績と相反比例するかのように悲惨なものでした。というのも当時のキリスト教では人間が直接神の声を聞くことは許されていませんでした。そうでもなければ教会の立つ瀬がないからです。しかし、ジャンヌは自称「神の声」を聞いてこの戦争に参加した少女。教会側はジャンヌをこのままにしてはおけないと新国王シャルル7世につめよります。そして対等な和平を結んだ有力諸侯やイギリスもキリスト教。「神の声」を聞いたジャンヌが神の使いというならば自分達は神の意志によって負けたことになりメンツが立たない……。
 そうこうするうちにイギリスがジャンヌを捕え、宗教裁判にかけられて異端者として(魔女として)火刑に処せられてしまうのでした。(その後彼女は聖人として1920年に名誉を回復……うう、誰かさんのようですが時代があわない)

 さて、他方イギリスは百年戦争をきっかけに大陸から総退却の格好となったのですが十四世紀末からランカスター家、十五世紀半ばからヨーク家が王位を占めました。これら両家は元は一つの王家の分家なのではありますがこの両者の間に百年戦争の後、ばら戦争と呼ばれる内乱が起きます。両者の紋章が赤ばらと白ばらだったことからこう呼ばれるのですが、この戦争は有力諸侯の権力争い。そしてこの戦いで封建諸侯は互いの利権のために争い、殺し合い結果的に国王と平民を直接結び付けることになります。

 そして結局、ランカスター派のヘンリー=チューダーが大勝を得て王位に上り(ヘンリー七世)、ヨーク家のエリザベスを妃としこの戦争は終結を迎えるのでした。この内戦で封建貴族の勢力が衰え、英国王朝の中でもっとも強大であると言われるチューダー絶対王政の時代が始まったのです。

1999.01.03