第3回 デュライ白書の謎

 「ファイナルファンタジータクティクス」を語る上で非情に重要な本は2冊。1冊はゲルモニーク聖典、そしてもう1冊はこのデュライ白書です。物語を解き明かしていくに重要なのは前者ですが、この物語自体「デュライ白書」によって成り立っているのですから、そこに着目するとなかなか面白いと思うのです。

 「デュライ白書」の著者は、クリアした人なら多分御存知でありましょう、オーラン・デュライです。そう、南天騎士団の魔道士にして占星術士の人。星天停止というとんでもない術を使える彼が獅子戦争後5年をかけて書いたのがデュライ白書。この本、名前ではよく登場しますが、その中身とは一体どんなものなのでしょうか。今回のコラムは「デュライ白書」の中身と、オーランがどこに着眼点を置いたか、そしてその成り立ちについての推測です。

 まずこの白書、公開1年後にクレメンスの公会議場において審議を受けますが、その際に「真相の暴露を恐れ」た教会によって回収、オーラン本人は異端者として火刑に処せられることになってしまいます。それは、勿論この本が教会の恐れたとおり、真実を述べていたものだったに違いありません。だとすると、その情報源は一体どこにあるのでしょう。オーランが見聞きしたことをまとめあげたこの白書、ともすると彼自身も知らない、語られない部分が多すぎるのでは、と思うのです。獅子戦争の謎、そして教会の不正・悪事を暴くために必要な鍵を持っている人物は、彼の他にもまだいるのです。

 その中でもっとも重要な鍵であるのは、勿論我らが主人公、ラムザ。オーランが白書を書くにあたって、もっとも必要な情報は彼から聞き出すしかないと思うのです。要するに、ED後〜デュライ白書を書きおわる5年後までの間に、ラムザ、そしてその周辺からの聞き込み調査でもしなければ、教会を糾弾できるような内容の白書は出来なかったんじゃないかと。そんなわけで私はラムザは生きている、そう信じて疑わないわけなんですが。

 ゲルモニーク聖典そのものを彼(オーラン)がどこかで見つけた、これも有り得る話です。本当はシモン先生が生きているのが一番よかったのですが。でも何かのはずみでゲルモニークだけオーボンヌの修道院に残っている…というのも(オーボンヌでローファルが何やら呪文を唱えていましたがそのときに一緒に持っていた可能性大)ありえないのかもしれません。

 その他、オーランと逃避行をするはめになったバルマウフラからも情報は引き出せるでしょうし、個人的にはディリータにも突撃取材(笑)を敢行したのではないか、と思います。そうして出来たのが、彼の5年の歳月と心血を注いだ「デュライ白書」。真実を追究し、異端者ラムザの身の潔白と生きざまを証明し、そして教会の不正を暴いたこの本は400年の眠りにつくわけですが、この本を書いたオーランは間違いなく物語一番の立役者といえるでしょう。全ての真相を知ることになったラムザも勿論一番、なのですが、真相、事実は自分の胸に秘めていただけでは何も変わりません。ラムザに欠けている(長所でもあるのですが)「世の中を変える」意欲をかわりに実行しようとしたのは、実はこのオーランなんじゃないかな、そう思います。

 ただ、FFT内に語られていること全てがそのまま、デュライ白書に書かれていることではないと思います。白書が語ったのはラムザ部分については、オヴェリア誘拐からベスラ要塞(もしくは最終決戦)までではないでしょうか。つまり獅子戦争に直接関わる部分なわけですが、とすると第1章とEDは一体誰が書いたんだろう?ということになるのです。まさかアラズラムさんが書いた「ブレイブストーリー」によるものじゃないよなあ、と思いつつ、もしかしたらラムザ自身の手記なんかも残っていたのかも。それかディリータ、こちらの方が保存するにあたっては(英雄王だし)確実ではないでしょうか。第三者が語るのは(アルマがいますが彼女はある意味蚊帳の外)まず考えられないことなので。

 そして、EDの最後の最後の2人については、デュライ白書には(当然ながら:教会不正に直接関わらないため)書かれていないことでしょう。これはオーランが事の真相と事実を知っていたいないに関わらず絶対的であると思います。要するに、あのゼルテニアの一件は、ゲルモニークの真相なんかよりずっと歴史の暗部となりえたのでしょう。

1998.04.28