詳細説明は「同人情報」をご覧ください
ささくれによく効く軟膏を舟賃の代わりにオボルスに渡したキエルは、彼の手を借りて小舟から降りた。
今朝はよく晴れた空、この天気は崩れないだろうと思って対岸へ薬草摘みに出たのだ。残念ながらひとりで「隠れ家」を出ることはまだ許されていないので誰かに付き添ってもらうのだが、今日は護衛する権利を誰が勝ち取るかということで早朝訓練に出るという石の剣のメンバーさんと旧聖竜騎士団の団員さんの間で「じゃんけん三本勝負」が始まった。
しびれを切らしたオボルスが怒鳴るまで二人は延々と勝負をしていて、それはそれで面白かった一方でいたたまれない気持ちにもなる。そうして、ほんの少し、本当にほんの少しだけ寂しかった。
なぜ、といえば。
ここまでで大丈夫です、と護衛を務めてくれた騎士団の団員さんに言ってキエルは昇降機に乗った。朝早くからけたたましい音を立ててしまうのはよくなかったなと思ったが、それももう遅い。昇っているのに反して沈んでいく心を持て余してキエルは溜息をついた。
大抵、護衛さんは今日のように腕に覚えのある人達が務めてくれる。だが、「彼ら」がこの隠れ家を訪れたときは話が変わる。キエルが何も言わなくても――それこそ忘れかけていても、日課の薬草摘みの「護衛」を彼らは買って出ていた。
キエルが心配だから、と彼らは揃って笑顔で言う。ひとりが「よい運動にもなる」と言ってオボルスの仕事を奪おうとして彼と喧嘩になるのもお定まりだったり、もう片方が呆れながらその櫂を奪ってしまうのもお定まり。結局は仕事がなくなったオボルスの先導のもと、薬草が茂る草地に着くと彼らはキエルにそれぞれ手を伸べた。
はじめは随分どぎまぎしたものだ。それは今でもあまり変わらないかもしれない。けれども、戦を駆け抜けた彼らの手に触れるのは嬉しかった。そして心があたたかくなるのだった。自然と笑顔になるのが自分でも分かった。
だが、今朝は違う。
その理由をキエルは知っている。というより、この一件では「彼らの片割れ」よりよほど詳しく知っている。それらは片方のもう片方に頼まれて片棒を担いでいるからで、自分の判断は正しかったのかなとキエルは未だ悩んでいた。
彼ら、というのは、キエルの恩人達だ。彼らは「キエルこそ」と言うが、そんなことはまったくない。お互い様だったし、色々あったなかでキエルは自分と考えも境遇も違う人がいることを知った。感情の置き場をどこにもやれずに自分ばかりを責めるしかない人達を知った。
それは、キエルの価値観を変えるのに大きな影響を与えた。この先、もしも(現れてほしいわけではないけれども)同じような人を助けたいと思ったときには彼らを思い出したい、そう思っている。――二人のお兄さん、ディオンとテランスのことを。
話を元に戻すと、キエルに片棒を担がせたのはディオンだった。少し前に送ってくれた手紙には「近いうちに隠れ家に行くことになったが、頼みがある」というようなことをインク溜まりが所々にあるが丁寧で綺麗な文字で綴られていた。その「頼み」の内容にキエルは少し考え込み、少し笑い、さらに少しばかり溜息をついた。確かに、と思い当たるふしもあったからだ。
――安眠によく効く薬を調合してくれないか。ロドリグにも訊いてほしい。
ディオンからの手紙にはそうあって、はじめは不思議に思ったものだ。諸々あった末に薬全般に苦手意識があるという彼が「キエルの薬ならば飲む。後は要らぬ、他の者に」と大怪我の治療時に散々ごねたのは忘れられない出来事だ(結局、テランスとタルヤによる長時間の説教で事なきを得たけれども)。それだから、思いもよらないオーダーにじわじわと驚きが込み上げてきたのだが、よく見ると手紙には続きがあった。
<後略>
<前略>
さくさくと音を立てて落ち葉を踏み締めて歩いた。いつもと、同じ。だが、その日ははっきりと違うことがあった。ひとりで時を消すときに使う大きな木の下に何人かの子どもがいたのだ。
あ、と自分より年嵩だろう子どもが間抜けな声をあげた。間抜けな声なりに危機感を覚えたのだろう、木に登ろうとしていたらしい二人がこちらを見やる。全員が仕立ての良い服を着ていた。――そんな格好で木登りなぞすれば服を汚してしまうだろうに、彼らはそのようなことも知らないのかもしれなかった。
『ディ……ディオン様?』
おそるおそるといったていで伺いを立てた子どもにディオンは頷いた。瞬間、子ども達が一歩を引く。『ディオン様に、おかれましては』と年嵩の子ども。
『ご機嫌麗しく……。え、ええと、……そろそろ父の「所用」も終わると思う――思いますので、僕……私達も失礼いたします』
ドミナントという存在に怯えているのだろう、つっかえながら子どもは言い、一礼をした。そうして彼らは落ち葉が小山のように積もった地面を一様に見やってから、ディオンが何かを言う前に後退り、走り去っていった。
『まこと、失敬な……』
最近覚えた単語を呟き、ディオンは不愉快な思いのままに降り積もった落ち葉を蹴った。
軽い感触になるはずが、何かにぶつかる。もしかして、とディオンが思うのと同時に、落ち葉の中から『いたっ』と幼い声がした。
よく考えれば、不自然だった。子ども達が最後に地面を見たのも、落ち葉の小山も。
乾いた音を立てて、落ち葉が動く。中にいるのは、人間か、動物か、それとも。ディオンは息を呑み、それから落ち葉を掻き分けた。――そうしてすぐに現れたのは、ディオンと同じくらいの年頃の子どもだった。
落ち葉に半ば埋まったままでディオンを見上げた子どもは数度瞬きをすると、先の子どもと同じように戸惑う様子を見せた。
『そなたは、ここでいったい何を?』
『ええと……』
その子ども曰く、目上の子ども達に言われるままに寝転がってみたら、彼らはどんどん落ち葉を自分にかけてきて覆ってしまった。驚きもしたし、少しばかり嫌な気持ちにもなった。出ようとすると、また落ち葉が降ってくる。次第に面倒になって大人しくしていたのだが、落ち葉の『掛布』は思ったより暖かく、眠くなってきた。うとうととしているうちに話し声がし、落ち葉を踏みしめて走り去る複数の足音がして、一瞬の静寂。残った気配はぼそりと何かを呟き、その直後に落ち葉を蹴り上げたのだった。
『それは、すまないことをした。けがはなかったか?』
素直に謝罪したディオンは子どもに問うたが、子どもは首を横に振ってにこりと笑み、礼をとった。
『大丈夫です、ディオンさま』
『……!』
子どもの笑顔に、ディオンは言葉を失った。何故か、涙がこぼれ落ちそうになった。本当に、不思議なことに。
……あのときは幼かったからなのだろうか。ソファに寝転がったままディオンは思う。しかし、答は知っていた。分かっていた。
記憶のなかで一番古い、そして、おそらくは初めて自分に向けられた笑顔。あんなに優しい感情を受け取ったことはそのときまでなかった。
驚きがあった。嬉しい、と思ったのは随分と後になってからだった。
溜息をつく。あれから多くの時間を共に過ごした。身分や立場の差を意識して最近はすっかり堅苦しくなっているが、そんな彼のそばにいるとやはりあたたかな思いになる。
落ち葉の山に潜ったことも。
祈祷の時間、寝そうになって揺れた彼の肩を小突いたことも。
魔法の修練の後に彼が淹れてくれた薬草茶がとても苦くて、涙目になったことも。
彼の誕生日にカードを贈ったら、笑顔の後に泣かれてしまったことも。
誕生日が分からないと打ち明けたら、初めて会ったあの日にしようと言われたことも。
――大切な思い出はしまい込み、これからは。
<後略>
空になったカップやポットを片付けるテランスの背を、寝台の住人と化しているディオンはぼんやりと眺めた。
記憶にあるより、彼は少し痩せたように思う。
「大混乱」での食糧難に加えて、「重度の怪我人」の世話をしながら「諸々の頼まれごと」も引き受けている状態だから、それはそうなのだろう。さらに言えば、相当頑固だから「ある信念」をもって必要ともいえぬほどの量の食事しか摂ろうとしない。ディオンがどう言っても、頑として頷こうとしなかった。そうして続けて言うことには――。
藪蛇を思い出し、苦い心持ちになる。苦いのは薬湯だけで充分だ。
口の中にその苦味がまだ残っている。ディオンはどうにかならぬものか、ともごもごと口を動かした。
キエルが作る数々の薬は時に酷く苦いが、不思議とよく効く。タルヤとその助手のロトリグも彼女の知識には舌を巻いていた。一方で最新医療を知りたいと言うキエルの要望もあって三人でよく「会議」をしているらしい。そうしてできあがった薬は少しの治験を経て真っ先にディオンに投与されるのだった。薬は要らぬという患者の意思などまるで無視して。
タルヤの長い長い説教に渋面で唸っていたディオンに譲歩案を提示したのはテランスだった。彼もまた顰め面でディオンを見、『キエルの薬を中心として、彼女の薬では補えないところだけロドリグに依頼しましょう。どうですか?』と言った。それなら、と頷いたが――、結局あれもこれもと飲んだり塗ったりする薬は増え、ディオンはげんなりするほかなかった。
それでも、気休め程度にしかならないと分かっていながら石化を防ぐために使っていた痛み止めや効能の怪しげな薬、そして大量の包帯を思えば、回復を自他共に認められる現状はとても良いことなのだと思う。何より、テランスが嬉しそうだ。
ところで、そのテランスだ。やはり気になる。
「……テランス」
背を向けて次の薬湯を準備する彼にディオンは声をかけた。どうかしましたか?と返答があり、その後に彼は振り向いた。手を止め、寝台で半身を起こしたままのディオンのもとへやって来る。ディオンが再度「テランス」と呼ぶと、彼は目を細めて寝台の横に跪き、嬉しそうに「ここに」と言った。
呼びつけたわけではない、と内心で言い訳をしたが、その実は呼びつけたふしはあった。幾許かの罪悪感を振り切り、まずは、と分かりやすくこけた頬に触れる。次いで親指の腹でそうっと目の隈をなぞり、ディオンは少し考えた。触ると痛いだろうから、吹き出物は眺めるに留める。
「……ディオン様」
ディオンの意を解したのだろう、テランスは困り顔で笑った。だが、その先は何も言わない。ここ最近にディオンが折に触れては言い出す言葉を待っているようだった。
ならば、とディオンは息をつく。
「言いたいことがある」
「……どうぞお手柔らかに願います」
芝居がかって言ったディオンに合わせてテランスは芝居なのか本心なのか分からない返答をしてよこした。そのまなざしはどこまでも優しい。
幸福を、唯一の幸せを齎す、彼の。
「私達は、もう主従の関係ではない。……少なくとも私はそのように思っているし、この先は対等でありたい。すべてとも、すぐにとも言わないが」
生還後しばらくして、ディオンは自らの呼称を変えた。「余」と呼称するのに酷く違和感を覚えたからで、同時に「そのように名乗らなくてよい」ことに安堵した。この先は分からない――また「余」と呼称して首を落とす階段を上ることになるかもしれない――が、今はこうして。
同様に、彼との関係も少しずつ変えていきたかった。今はもう、そう思える。白闇のなか、己という存在の可否を思い詰めていた日々は次第に遠ざかりつつある。多くの者の支えと、何より目の前で膝をつく男の献身と愛によってそれは為された。
未だ、揺らぐことはある。だが、ひとりではないと知っている。分かっている。その事実が嬉しくて、心に沁みて、涙を隠そうと思ったこともしばしばあった。彼は気付かないふりをしてくれているが、そのまま眠りの世界に入りこんでいく己に口づけを落として愛の言葉を囁くのだった。名前と共に。
――愛してる、ディオン。
至福のひととき。それが、薬が齎す眠りだとしても。
だが――。
「私の名を呼び捨てにすることは難しいか?」
「そう、ですね……」
少しばかり首を傾げてディオンが言ってみせた問いに、テランスは言葉を濁した。こういうときに視線が泳いでしまうのは己の癖だったはずだが、彼にも伝播してしまったのだろうか。ディオンはそんなことを思った。
「難しいというか、身に染み付いているからでしょうか。……油断すると、このような言葉遣いに」
「成程?」
言い訳気味のテランスの言葉を受け、ディオンは目を細めた。さて、どうすれば彼を口説けるだろうか。「薬湯が渋くなりますから、一旦御前を失礼いたします」と言い訳をさらに重ねて傍を離れたテランスの背をそっと眺めた。
――私の、望みは。
欲張りだなと半ば自嘲しながら、ディオンは「望み」を思い起こした。
たとえば、名だけで呼び合うこと。たとえば、平易な口調で会話をすること。想いに触れること。自らの望みを、苦しみを伝えること。互いのこころを、時には暴くこと。相手のみならず自己を大切にすること。それから……。
無論、できていないことばかりだ。特に、己は。だが、前はそういったことの大切さも知らなかった。ただ、目の前と己のことのみで手一杯で、彼の想いの根を慮ったことなどなかった。
彼を、本当に愛していた。だが、壊れゆく世界の元凶のひとつである我が身には、彼は眩しすぎた。暗夜の果てへ向かうためには、彼を傍には置けなかった。
それゆえの、あの夜。ぼかした言葉と、合わせなかった視線と、祈りと願いの涙。ひとつの終わり。去りゆく彼を過去として閉じ込めた。
早く終われ、と思った。これ以上揺らぎたくはない、と思った。紫の花は受け取れなかった。心残りを思い起こす前に、生への執着を願う前に、すべてを終いにしたいと願った。暗黒の塊を睨み、そればかりを思った。罪人であることを強く心に刻み続け、黙した。
旅立ちの日、永久の愛を誓いあう二人を見つめた。だが、往路のみで終わるのは己ひとりでよい。炎の兄弟と彼らの幼馴染はどうあっても、この先の世に必要だった。最良で最善だと思い為し、翼を広げた。
放つ光も潰えて思惑通りに堕ちる空のなか、己という「人間」を表したかった相手は彼ではなかった。彼を想うことのないまま、堕ちていった。薄情なことだと後に思いもしたが、悔やみはしなかった。
いずれにせよ、これですべて終わった。……そのはずだった。
それなのに、彼は此処にいる。己は生きている。果てしなく不可思議な事象と、それと等しいほどの周囲の献身と、様々な経緯を経て変容した彼と己の望みによって。
死に至らなかったことへの衝撃や動揺は去った。それを茫漠と願った日々もまた同じように。共に未来を、と彼に請われ、望まれ、己が心は息を吹き返した。……歪みを帯びた幻惑は未だ付き纏うが、もう辛くはない。
だが、と思う。彼と己はあの夜から動いていない。壊れ、止まってしまった時計はそのままだ。否、壊して、止めた時計はそのままで。
そのことに、彼は気が付いているだろうか。願いを口にしても、想いを淡く乗せても、何処かすれ違っていることに。
「分かっているのだろうな……」
声には出さずにディオンは呟いた。そうして思う。この時計は直してもよいのだろうか、と。あの夜を越えたいと願う心を是とできるだろうか、と。そんな己の望みを、彼は持ち合わせているだろうか。
「ディオン様?」
急に呼びかけられ、ディオンは我に返った。ばく、と心の臓が大きく鳴ったような気がした。長々と思考に耽っていたことに苦笑したい気持ちを抑え、向き直ったテランスに小首を傾げてみせる。
目線で促すと、テランスはトレイを持ってやってきた。寝台の横に置かれてある木椅子に座り、小さな卓にトレイを置く。
「……それで最後か?」
「ええ」
神妙にディオンが言うと、テランスは穏やかに笑んで頷いた。カップに入っているのはすっかり飲み慣れた安眠を促すキエルの薬湯だろう。立ち上る湯気が運ぶ香りで分かる。これは飲みやすいから、さしたる抵抗感はない。だが、隣の小皿に置かれた黄色い板状のものは初めて見る「薬」だった。
「これは?」
薬のたぐいはもう要らぬと幾度もそう言っているのに、テランスもタルヤもキエルも首を横に振る。すっかり歩けるようになったし、階段の昇降もそれほど苦ではない。石化の進行は止まり、その痛みも軽くなった。生身と石の境目はどうしても引き攣れてしまうが、これは仕方のないことだと思う。
――かつてできたことを、すべて取り戻すのは諦めて。
悔しいでしょうけど、と付け添えたタルヤに頷いてもみせたのに。諦めることを、選んでいるのに。
――それでも。
彼だけはどうしても諦めたくはない、そう叫ぶ心はどうすればよいのか。それだけは闇のなかに在る。
「……そんなに怖い顔をしないでください。薬ではありません」
干し芋ですよ、とテランスは言った。干し芋?と繰り返したディオンに、甘くて滋養があるそうです、とテランスは続け、板を千切った。毒味のために端を食べるのだろう。
「テランス」
名を呼ばれ、テランスがディオンを見る。その隙を狙いすまし、ディオンは手を伸ばして彼が持っていた毒味用の干し芋を奪った。そうして、彼が呆気にとられる前に、と急いでそれを口に入れる。
噛んでみれば、確かに甘い。だが、それはどうでもよいこと。いっそ、毒でもよかった。
敬語も、毒味も、恭しい扱いも、要らない。そう思うのは、我儘なのだろうか。出会ったときからの、幼心からの願望も、諸々と同じように「諦める」しかないのだろうか。
止めた時計も、彼の行ないも、行き場を失った感情も。
終わりの見えない思考をそのままにして、干し芋を飲み込む。瞬間、「ディオン!」と血相を変えたテランスにディオンは揺さぶられた。
「あ……」
「大丈夫ですか⁉ すぐに吐き出して!」
名を呼ばれた、敬語も吹き飛んだ、とディオンは思ったが、それどころではなかった。本当に吐かせるつもりだろう、肩を掴んで指を口に突っ込もうとするテランスをなんとか躱す。
「ま、待て!」
「待たない! 何かあったら……!」
躱した反動で寝転がる羽目になったディオンをテランスが焦った声色で追い詰める。人の話などまるで聞かないテランスに人差し指を口元に当てられたディオンは、抱き起こされる合間に咄嗟にそれを舐めた。
薬の味がする。すっかり慣れてしまった味だ。
――けれど、本当は。
「ディ、ディオン! ディオン様!」
敬称を再びつけて呼んだテランスを無視し、指の腹を撫でるように舐める。半ば自棄のようなものだった。昔のように「ほしい」という欲が走り出して止まらない。両の唇で食み、切り揃えている爪に歯をたてた。
そういえば、テランスは己を吐かせるために指を口に突っ込もうとしたわけだ。そう考えてみると、状況はたいして変わらない。こじつけだと己自身でも思う。彼の意を知りたいと思っていたのに、我欲ばかりが暴れ狂う。だが、壊した時計が元に戻らないなら、もう戻せないとしたら、やはり最後に。
<後略>